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身代わり猪口

5月も残りわずかになりましたが、只今制作期間中です。
6月の半ばに東京の企画展が控えていることもありますが、ご注文いただいた器をただひたすらに作っております。

先日、窯を焚き上げて窯出しをした時のこと。
七十点近く窯の中に器を入れていたのに、ただ一つだけ焼きの悪い器がありました。写真右の器(わかりにくいかもしれません)。
身代わり猪口_c0235504_18345101.jpg
窯内で何が起こり、何がそうさせたのかは謎ですが、穢れを一身に背負ったかのように、少しだけ黒ずんでいました。
同じ場所で器を焼いてこうなった事もなく、他の器たちは全く問題なく焼けていたこともあって、とても不思議でした。

これは陶芸用語でいうところの部分酸化(磁器は還元焼成です)というものです。今回の器の場合は大部分酸化でしたが・・・。

磁器は還元焼成することで焼き締り、生地も白くなりますし、呉須の発色も還元焼成の方がいい藍色になります。
釉薬の灰に含まれる鉄分も還元焼成では青緑っぽく発色し、酸化だと黄緑がかった発色になります。(特に私の釉薬は灰の作用が強く影響します)
身代わり猪口_c0235504_18345905.jpg
焼成不良品の器をじっと眺めていると、捨てるに忍びない気持ちになりました。
身代わり地蔵という昔話がありますが、窯焚きの悪いものを一人被ってくれたような気がして、身代わり猪口と名付けて持っておこうと思っています。
案外、欲しいという人が現れるかもしれませんし。

by kikigama | 2015-05-24 19:14 | 吉田崇昭 記す | Comments(0)